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誰がためのヒーローか『アイアムアヒーロー』第265話 [アイアムアヒーロー]

【ネタバレ注意!】本記事はネタバレを含みます。本編を未読の方はご注意下さい!

『アイアムアヒーロー』の連載終了が2017年2月。

そして、現在は2021年12月。

最終話から、そろそろ5年が経過しようとした頃、不意な朗報が届きました。

「あの最終話の後日譚が80ページ以上描き下ろされる」

それを知った時、まず感じたのは驚き。

次に、喜び。

最後に不安、でした。

例えば、『アイアムアヒーロー2』だったら分かるんです。

「あ、続編やるんだ」と、腑に落ちる感じで。

しかし、後日譚を80数ページのみとなると、
果たしてあの終わり方の後をどう描くのか?

本編で描かれなかった回想シーンでキャラの掘り下げをするのは常道ですが、
それは“連載中”の単行本の特典としてなら“あり”かな、と思いますし、
実際にそういうおまけページを描く漫画家さんは非常に多いですね。

でも、今回のこれはそういう形にはしないだろうし、
読者が求めているのはそれではないことは花沢さんも承知しているでしょう。

なら、どうなる?

あの“無の世界”に続きがあるのか?

そりゃあ、気になりますよ、すっごく。

結局、期待と不安が入り混じる、
期待寄りのワクワク感で12月10日を待っていました。

そして、Kindleの配信が開始されたのを確認し、一気に読了。


さて、本編。

264話でスラッグ弾を自作した英雄は、雪積もる新宿にいました。

文明も社会も何もかも無くなった世界で、人間は自分一人。

そうなると、やることは一つ。

食料の調達です。

地位も名誉も、恥も外聞もなく、ただひたすら“生”のみを続けるためです。

しかし、ちょっとだけ英雄が贅沢なのは、
鹿肉は飽きたのでイノシシを穫りたいということ。

つまり、鹿は食べ飽きるほど定期的に穫れているのでしょう。

で、また狩猟シーンが展開されるかと思った矢先。

そこは、やはり『アイアムアヒーロー』。

“ヤツ”の足跡を発見し、英雄の顔に緊張の色が走ります。

まだ新しい足跡は大きく、指らしきものが6本。

この足跡の主は、明らかに異形の姿をしているのでしょう。

ヤバそうなヤツが徘徊していることを知り、
英雄は足跡の向きとは反対方法へ進みます。

やがて着いたのは都庁前。

そして本庁舎ビルには、どでかいZQNの塊が!

池袋のものと同じ、カチコチに固まったZQNの集合体です。

池袋と違うのは、新宿のそれは“何か”を産み出している、ということ。

しかも、目があり、手足らしき物もあります。

反射的にそれに向かって英雄は発砲します。

しばらくして、また次の“何か”が産まれてきます。

また、発砲。

次もまた発砲。

この辺で英雄が腹をくくりました。

これまでに味わってきた理不尽に対する怒りと、
大量のZQNを葬ってきた自信を感じる独り言を語りながら、
文字通り腰を据えて撃ちまくります。

かつてアウトレットモールで見せた、驚異的な集中力で百発百中。

英雄と巨大ZQNの根比べの様相です。

ヒーロー然とした英雄が実にカッコいい。

やがて疲労と寒さで根負けしそうになった英雄の前に、
それまでの異形とは違う、驚きの生き物が!

これは・・・何だろう・・・?

いや、何だろうも何も、目に涙を浮かべた英雄が言うように、
明らかな“人間”なんですが・・・!?

これは・・・どういうことなのでしょう・・・!?


ここから一転して、遂にエピローグへ。

このエピローグは非常に平和で、温かな、ほっこりする内容でした。

ひいろちゃん、可愛いです。

目標も無く、生き残った意味も見失っていた英雄の生きる理由。

それが忌むべきZQNから産まれた、鈴木ひいろという人間であることの意味。

第258話のクルス会議(?)の際、
「このウイルスは絶望状態の人間には希望の光になる」という台詞がありました。

もし、英雄が本当に感染していたのだとしたら、
死を覚悟した英雄に差した希望の光が鈴木ひいろだった
・・・というのは飛躍しすぎでしょうか。

てっこも、小田さんも、比呂美も守れなかった英雄が見つけた、
いま守るべき希望の存在。

それは英雄が本当に欲しかったものなのかもしれません。


最後、「行ってみるか・・・」のシーンで英雄が見せた表情は精悍で、
これまでのような卑屈さや張りつめた緊張感は見られません。

決して順風満帆ではないかもしれませんが、
それでもどこか希望を匂わせる雰囲気で『アイアムアヒーロー』は幕を閉じました。

2017年当時のものとは明らかに違う読後感。

蛇足ではなく、納得感のある終わり方。

まさか、また新しい『アイアムアヒーロー』が読めるとは思ってなかったので、
なんだか連載当時の高揚感が蘇った気分で、非常に楽しかったです。

本当に終わりましたね、これで。

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